弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

権利能力なき社団が「消費者」に該当すると判断された事例

【東京地裁平成23年11月17日判決】

   判例タイムス1380号搭載

 

【事案の概要】

 大学のラグビークラブチームが、合宿のため宿泊予約をしていたが、チーム員の一部が新型インフルエンザに罹患したため、宿泊前日に予約を取り消したところ、宿から取消料約96万円を請求され、いったんは支払ったものの、返還を求めて提訴した事案(簡裁控訴審)。

 なお宿泊代金は約138万円。旅行引受書には申込者都合により宿泊を取りやめる場合には、宿の定める取消料を支払う、との定めがあった。

 ラクビークラブチームは、旅行引受書には取消料が発生する条件や金額が明確に書いていないし、宿のホームページに記載していることは知らなかった、ラグビークラブチームは消費者契約法上の消費者にあたるから、宿の定めた取消料は平均的な損害額を超えるのでその部分は無効だ、などと主張して争った。

 

【判決の要旨】

 旅行引受書とホームページからすれば、旅行の前日にキャンセルした場合、代金の100%を支払うとの内容で合意したことは明らかである。なお宿は学生団体であることを考慮して、所定の取消料の7割を請求している。

 学生がラグビー活動をするために結成した団体であり、旅館営業者である宿とは情報の格差、交渉力に差があり、消費者にあたる。

 したがって、宿が徴収した取消料約96万円が平均的な損害を超えていれば、その部分は無効である。

 各種資料からは約89万円(旅行代理店報酬を含む)が今回の宿泊予約キャンセルによる宿の平均的な損害と認定できる。

 よって、宿はチームに対し、差額の約7万円を支払え。

 

【検討】

 消費者契約法には、消費者とは個人をいう(消費者契約法2条1項)とされているが、法人でもその性質によっては消費者にあたるとの判示は重要。もちろん弁護士は法律に書いていようが「実質的に~」などと理屈とアヤをつけていくのが商売ではあるが、手ぶらよりは地裁でも裁判例があるにこしたことはない。

 なお、裁判では食材費や光熱費、マイクロバス運行費用等など、詳細に宿の被った損害として認められるかが検討されているが、標準旅行業約款のようなものが適用できないレアケースだったとも述べられているので、業界の標準損害がなんらかの基準からわかるケースだと、キャンセル料が不当に高いと感じても通らないケースも多いのでは。

 相談を受けた時点で、弁護士の費用で足が出る可能性が高い事を伝えているだろうけど、報酬、もらいにくいなぁ。