弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

弁護士会の役員として参加した懇親会費用を経費として算入できるか

【東京高裁平成24年9月19日判決】

 判例タイムズ1387号掲載

 

【事案の概要】

 Xは、弁護士業を営んで事業所得を得ているものであるが、弁護士会日弁連の役員等も務めていた。Xはこれら弁護士会等の行事に伴う懇親会に出席し、その際に飲食費等を支出したが(その他、役員に立候補した際の活動費用や他の役員の家族の逝去についての香典費等を含む。)、同費用を自身の弁護士業の経費として計上し、確定申告したところ、税務署は、必要経費として認めなかったためXが処分取り消しを求めて訴えた事案。一審敗訴。

 

【判決要旨】

 一部勝訴

 弁護士会日弁連の役員としてその権限内でした行為の効果は、弁護士会等に帰属するものであり、Xが役員として行う活動は、弁護士会等の業務になるとしても、弁護士としてのX個人の「事業所得を生ずべき業務」として認めることはできない。

 もっとも、役員等としての活動であっても、Xの業務に必要な支出であれば、Xの事業の必要経費に該当するということができる。弁護士会等の活動は弁護士によりなされるものであり、会の活動に従事することは、弁護士個人の業務に密接に関係する。したがって、弁護士会等の役員等としての活動に要した費用が、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったと言うことができるのであれば、弁護士としての事業所得の必要経費にも該当すると解する。

  

【解説】

 全国の弁護士は、都道府県単位で弁護士会、という(岡山弁護士会とか広島弁護士会とか。東京は大きいので3つもある。)自治団体を作っています。この自治団体で、お互いに法律や裁判例の研修・研究をしたり、ボランティア活動(人権擁護活動や当番弁護制度、学生の法廷傍聴の案内などもします。)をしたり、問題のある弁護士への懲戒などを行っています。

 団体があれば役員もいるので、持ち回りとか互選とかで(まあ場合によっては立候補して熾烈な選挙戦の末)、会員である弁護士が役員になります。無報酬のことも多く、本業が滞るくらい忙しいようです。

 以前、判例タイムズで、この事件の一審(徴税されたことを不服とする弁護士Xが敗訴)が紹介されており、ただでさえ金と時間を使わされるのに、経費としても認めてもらえないとなると負担が大変だな、と思ったことがあります。一部勝訴とありますが、経費として認めにくい二次会費用のようなものが削られたくらいで、おおむねXの主張が通っているように思われます。