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弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

やりすぎた弁護士の例?

【東京地裁平成24年7月9日判決】

 判例タイムズ1389号掲載

 

【事案の概要】

 交通事故で死亡した被害者の相続人らの代理人弁護士が、被害者の死亡は医療過誤による部分もあるとして、医療機関に対しても損害賠償を請求し、示談を成立させ、ついで病院から受領した解決金6600万円の存在を伏せたまま加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、結局、加害者とも和解して9000万円を受領した。

 その後、事実経過を知った加害者の保険会社が、上記被害者側の代理人弁護士に対し、損害の二重請求を行ったとして損害賠償を求めた事案。

  被害者側弁護士は、「医療過誤の可能性については加害者側代理人弁護士にも伝えていたし、訴訟告知もしている。被害者側としては病院に確認すれば済む話である。病院から支払を受けた事実を告知すべき法的義務はないし、病院との関係と交通事故加害者との関係では異なる内容の賠償請求を行っているから二重請求ではない」と主張して争った。

 

【判決要旨】

 多数発生している交通事故の事例において、現実に医療過誤が認められ医療機関による損害賠償あるいは交通事故の加害者から医療機関への求償請求がされることは、社会的には稀な事例である。交通事故加害者やその代理人の立場において、被害者側から何ら説明がないときに、医療過誤による損害賠償がされていることを予測して賠償の有無を積極的に調査することを期待することは極めて困難である。本件においては裁判所ですら、医療過誤による損害賠償の可能性を全く考慮に入れず和解案を提示しており、被害者側代理人である被告弁護士は、裁判所や加害者側が医療過誤の損害賠償の帰趨についてまったく了知していないと知ることが当然できた。

 このような事実関係等からすれば、被告としては、和解契約に際して民法及び民事訴訟法に定める信義則上の義務として、医療過誤による解決金の支払を受けた事実を説明すべき義務があった。(従って被告に賠償義務がある。)

 

【解説】

 交通事故被害者が搬送先病院の医療過誤で死亡した場合、交通事故加害者と医療機関と、両方に責任を問うことができます。そして加害者と医療機関は、それぞれの行為が被害者の死亡にどの程度関与したかによって、お互いに割合的に負担部分を決めます。例えば、被害者の遺族らに対し、被害者の死亡による損害賠償として1億円を支払う必要がある場合、病院のミスが7割を占めるのであれば、病院が7000万円、加害者が3000万円を負担します。もっとも、被害者側はどちらに対しても1億円を請求できます(悪いのはお前ら2人なんだから、とりあえず全額払え、負担割合の話はそっちで勝手につけてくれ、というわけです。)。もちろん両方に請求しても、もらえるのは1億円までです。

 んで今回は、上記の例で言えば、被害者側が病院から5000万円もらったのに、加害者に対して1億円まるっと請求して、7000万円もらった、というような事例。どうして被害者側弁護士がそんなことしたのかは謎。一部弁償を受けたと相手に伝える義務はないと考え(信義則上ある、とは判決になるまで断言できない)、被害者にとって最も利益になるように行動した、ということなんですかねえ。