免責を得るためだけの破産申立が許容された例
【東京高裁平成25年3月19日決定】
判例タイムズ1390号掲載
【事案の概要】
過去に破産手続を申立てたが、その際には免責許可申立をしなかったため免責を受けられなかった破産者が、債権者から執拗に督促され、動産執行まで受けたため、再度破産申立をして免責を求めたところ、免責が認められたため、債権者が申立権の濫用であるとして決定に対して即時抗告した事例。
【決定要旨】
抗告棄却。
破産手続が適法に開始された以上、その申立が濫用にわたるなどの特段の事情の無い限り、免責許可の申立が許されない理由はないし、本件において許されないとする特段の事情はない。
【原審決定要旨】
債権者は、今回の申立は、債務者が過去の破産手続において免責許可申立を怠っていたにもかかわらず、実質的にこれを行おうとするものであって法の潜脱であると主張する。しかしながら、前件で免責許可を得られなかった破産者が免責許可を得るために破産を申立てることも違法とする定めがあるわけではない。本件において破産者の財産状況や債務状況は、全件と全く同じであるが、このことをもってしても申立が違法になるとは言えない。
なお破産者は、前件において、破産管財人に対して免責不許可事由はない旨の報告書も提出しており、債権者からの不許可とすべきの書面に対しては反論書も提出しているのであるから、実質的には免責に関する活動も行っている。漫然と期間を徒過したわけではないという点も指摘できる。
【解説】
一般人がよく誤解するところですが、破産手続と免責手続は別の手続で、前者は、債務者の財産を整理して債権者に平等に分配する作業で、後者が借金棒引きにしてよいかを裁判所が判断する手続。
おそらくこの破産者は自分で申立書を作成したのでしょう。で、裁判所は破産と免責を同時に申立てることが通常なので、まさかやってないとは思わなかったと。もちろん、免責申立てをしない本人が悪いわけだけど、免責不許可を強く言い立てる債権者もいて破産管財人も選任しているのだから、免責許可申立をしていないことがわかったらやるように案内すべきだったということになるでしょうね。もちろん、案内はしたがやらなかった、ということは考えられますが。
というわけで、これは前件の破産管財人ないし破産裁判所のちょんぼを救済するということにもなりますね。もちろん、単なる手続ミス程度で実質的には免責されていた破産者なんだから、別にもう一度申立てればいいじゃない、というのは自然な結論なので、別に身内をかばったと言いたいわけではありません。