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弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

不起訴にした少年事件を成人後に公訴提起した事件

【最高裁平成25年6月18日判決】

 判例タイムズ1392号掲載

 

【事案の概要】

 16歳の少年Aが、少年Bを乗せて原付を飲酒運転していたが、歩道縁石に接触した際に少年Bが路上に落ちて高次脳機能障害の後遺症を伴う傷害を負わせた事件において、被害者の記憶が後遺症のため回復せず、Aも「運転していたのはB」などと自らの犯行を否認したため、警察での捜査に2年11か月を要し、いったんは嫌疑不十分として家裁に送致すらしなかったものであるが、被害者からの検察審査会への申立てを機会に補充捜査を行い、改めて事件を再起し、すでに成人していたAを公訴時効完成の8日前に起訴したという事案。

 これに対し弁護人は、捜査遅延のため家庭裁判所の審判を受ける機会を失わせた、全件送致義務違反であり、しかも成人してからわざわざ公訴提起したものであり違法、などとして争った。

 

【判決要旨】

 上告棄却。

 本件では運転者特定まで日時を要したのも仕方ない事情があり、不当に捜査を遅延させたものではない。また、嫌疑不十分である以上はわざわざ家裁に送致しなければならないものではない。そして、改めて補充捜査して嫌疑が認められた以上は、その時点で起訴することも違法ではない。

 

【解説】

 ものすごくざっくり言うと、16歳のガキが2ケツでこけてツレを怪我させたという事件であって、被害は無視できないレベルであるが、行為自体は(被害者の落ち度もあり)この時点で家庭裁判所に送られていれば、刑事罰を受けるようなものではなかったのに、5年ほど放置されてから改めて捜査されることになったために、すでに成人していたAについて公訴提起されたというもの。公訴提起されたということは、高確率で有罪の自由刑が科せられる(執行猶予はあり得る)ことになるわけで、Aもそりゃないよ、と思ったことでしょう。公務員にでもなっていれば免職されてしまいますしね。

 16歳の雑な運転のツケを大人になってから払わされるのはちょっとひどいなと思うし、16歳の時にきちんと家裁で裁いていないと本人の更生という点で意味がなかったんじゃないかと思うのですが。ま、捕まったときに素直に自白していれば終わった話なので、嘘の代償は極めて高かったということですね。 

 B側からすれば、大損害を受けた上に嘘をついて罪を免れようとしたAを時効直前で公訴提起、というドラマのような展開。まあこの人も道交法違反の共犯なんですが。