弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

固定資産評価額の決定が違法となる場合について

最高裁平成25年7月12日判決】

 判例タイムズ1394号掲載

 

【事案の概要】

 地主が土地課税台帳に登録された土地の価格を不服として審査請求、取消訴訟を提起した事案。

 

【判決要旨】

 破棄差し戻し。

 本件土地の時価は登録価格を上回るから、価格の決定は違法とならないが、控訴審の判断方法が誤っているから再検討せよ。

 固定資産税の課税標準を定めるための土地課税台帳に登録された価格(登録価格)は、適正な時価とされており、登録価格がその時点の時価を上回るものであることが明らかになれば、登録価格の決定は違法になる。

 時価を上回らなかったとしても、評価方法が合理性を欠くと言える特別の事情が存する場合にも、そのような評価方法による登録価格の決定は違法になる。

 なお補足意見として、単に時価が上回るだけで違法とされる場合、自治体はいちいち反論しなければならなくなり、大量の固定資産税の課税に関する評価について、公平(各市町村の評価の均衡を確保する必要性がある。)かつ効率的に処理しようとした地方税法の趣旨に反することになる。したがって、土地名義人が鑑定書により適正な時価を直接立証し、登録価格の決定を違法とするためには、前提として評価方法の問題点を主張立証すべきである、との意見が付されている。

 

【解説】

 一応、判例法理としては、登録価格が時価を上回っていることを証明すればOKとしているが、土地の名義人が私的鑑定書を出しても、役所の定めた基準より信用できるとしてくれることはあんまりないように思うので、事実上は補足意見のように、評価方法が不合理であることの立証もしなければいけないように思う。