弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

はじめに

 本ブログをご覧いただきありがとうございます。

 本ブログは、僕が近時の裁判例の検討をまとめるために開設したものです。

 独立開業を機に、交通事故、相続、労働など、注力分野を中心とした一般向け解説記事を作成したり、裁判時事ネタへの言及なども増やしていく予定です。

 雑感を書き散らした程度ですので、ブログの記事や記載内容をなにかに引用したりすると、恥をかきます(主に僕が)。

 コメント欄に何か法的なツッコミがあった場合、気力・体力・時間が充実していて気が向けば、回答します。

 時事ネタや弁護士の生態等についても書くことがあるでしょうが、あくまで裁判例検討が主になるようにしたいと思います。

 コンタクトは、n-tongu@myojo-law.jpまで。なおメール、電話での法律相談は受けておりません。

 以前は住宅のセールスをしていたり、お役所で許認可権をふりまわしたりしていました。元検事とか元マスコミとか手短なキャッチフレーズがなくて無念であります。

 

逮捕手続中の接見申出を無視しても違法ではないとされた例

東京高裁令和5年7月27日判決


【事案の概要】
 平成29年11月24日に、被疑者に対する逮捕状の発付を受けた埼玉県警の警察官は、11月27日、静岡県の被疑者の自宅に赴き、被疑者に任意同行を求めて埼玉県内のA警察署に同行した。
 A警察署の警察官が任意で取り調べを開始したが、被疑者が被疑事実を否認して雑談にも応じない姿勢だったので、逮捕状を執行しようと考え、上司の決裁を得た。
 ちょうどその頃、弁護士がA警察署に現れ、被疑者との接見を申し出た。
 しかし、A警察署には接見できる施設がなかった(謎認定)。
 A警察署の警察官は、弁護士に対して、逮捕状を執行中であり、弁解録取手続を終えた後なら接見可能である、と伝えた。弁護士は抗議。
 警察官は弁解録取手続きを終えた上で、被疑者に対して、弁護士が来ているが接見するかと聞き、被疑者が接見を希望したので、接見室で接見をさせた。
 後日、この弁護士が、埼玉県に対して、面会をさせなかった措置が違法であるとして国家賠償を求める裁判を起こした。
 地裁では慰謝料5万円が認容。埼玉県が控訴。

【高裁の判断】
 埼玉県は賠償しなくて良い。
 身体の拘束を受けていない被疑者の弁護人等が、任意の取り調べを受けている被疑者との間で立会人のない面会申出をした場合には、速やかにその旨を被疑者に告げて、弁護人と面会するか任意の取り調べを受け続けるかを確認すべきである。しかし、逮捕状を執行する段階においては、まずは捜査機関による逮捕権の行使を妨げることはできないのであり、逮捕前に弁護人と被疑者を面会させる必要はなく、面会させる義務がないのだから弁護人等が来ていることを被疑者に伝える義務もない。また、弁解録取も、引致後直ちに行うべきものとされているから、弁解録取前に弁護人と接見させなかったとしても違法ではない。


【解説】
 えっと、刑事訴訟法203条1項が、司法警察員は弁護人選任権を告げて弁解の機会を与えなければならないとされているんですが、裁判所って「選任権があると伝えれば良く、現在まさに弁護人がきて面会できることは伝える義務はない」という解釈を取っているということ? 弁護人が来ていることを黙ったまま逮捕手続を進めるのって、憲法34条にいう「直ちに弁護人に依頼する権利」の侵害そのものなのではないかと思うが、上告は棄却されているので最高裁も「弁護人の助力を得る機会が今まさにあるんだが、それは無視して被疑者の供述を取ってヨシ」という解釈なのね。
 どうもこれまでの判例を見ても、接見交通権というものが最高裁には基本的人権ではなくてキャッチコピーかなんかにしか見えていないんですよね。
 ちなみにA警察署には、警察官の立会なしで接見させる部屋がない、という物理的制約もあったとされているようですが、さまざまな施設賠償や介護過誤事件で「人や予算がなくてできないは理由にならない」と蹴飛ばし続けてきたのに、警察にはお優しいことです。

 なお、さいたま地裁においては、任意取調べをしつつ逮捕状の執行のため署内決裁手続中に弁護士から接見申出があったんだから、それは任意取調中にすぎず、直ちに伝えるべきだった、という判断ですね。
 一方、東京高裁は、逮捕状の執行段階だから任意取調中ではない、という判断をしています。逮捕状執行のために決裁状を回してたばこ休憩をしている署長の指揮待ち、という時間(そういう時系列と認定されています)は、国家の適正な逮捕権のため接見交通権に優先するということのようですが、理由は書いていないのでよく分かりません。
 刑事裁判って本当にクソゲー(主に運営のせい)なのですが、普通の人はあまり関わらないので(そりゃそうだ)、たまに運悪く関わることになると大変に驚かれます。
 

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マンションの59条競売申立後に所有者が死亡した場合の措置

大阪地方裁判所令和6年9月5日決定
【事案の概要】
 分譲マンション内に、共用部分に私物を放置したり騒音を発生させたりするほか他の居住者との間でトラブルを起こしていた人の所有する物件について、マンション管理組合が競売請求訴訟を行って認められた。管理組合は判決に基づいて競売申立を行い、裁判所がこれを許可したが、申立後競売許可の前にその人が死んでいたことが分かったが、この場合、裁判所は競売を取り消して良いか、ということについて判断がなされた事案。
【判旨】
 競売手続を、裁判所の職権で取り消す。
【解説】
 まず、分譲マンションにおいては、各区画の所有者は、共同の利益に反する行為をしてはならないとされています(区分所有法6条1項)。
 これに反した場合、最終的には、所有権を奪うことができます。これが、今回の競売請求訴訟といわれるものです(区分所有法59条)。
 つまり、マンションという共同体を一緒に営むことができない人がいる場合は、その所有している区画を売り払ってマンションから追い出す、ことが予定されているのです。
 本件は暴れる系だったようですが、この手続の多くは管理費滞納が多額に、みたいなケースで見られます。ざっと見た限りですが、7~10年にわたって300万円前後を滞納しているようなケースで、この手続を利用しています。結構大変ですね。もっと程度が軽くても認められる可能性はありますが。
 さて、本件はどういう話かというと、超迷惑な人が所有していた区分について競売してよいかという裁判を起こし、OKとなったので申し立てると、超迷惑な人が死んでしまった場合、そのまま競売を進められるか、という話です。裁判所はダメだよ、という決定をしました。これは「超迷惑な人がいなくなったんだから、もういいじゃん」ということです。
 暴れる系ではなく、滞納系の場合に「でも相続した人も払わないって言ってるけど」みたいな場合はどうなるのでしょうね。おそらくもう一度、一から(つまり管理組合総会決議)手続のやり直しになるのでしょう。さらに考察するに、相続した人が「生前はうちの親族がすんませんでした。とりあえず今後の管理費は払いますが、滞納分は額も大きいのできついです」みたい微妙な対応を取った場合に、これが「共同の利益に反する行為」にあたるかについてはどうでしょうか。「滞納していることについて誠実に対応しないんだからだめだろ」という見解と「不払いが続く状態は改まったのだから、従前の管理費の不払いはただの債権回収の問題であって、強引に所有権を奪う理由にはならないのでは」という見解と、どちらもありそうです。

 ちなみに、この超迷惑な人が裁判中に他人に物件を売ってしまったらどうなるでしょうか。平成23年に最高裁判例が出ており「売っちまったんなら競売はできないよ」ということになっています。これ、買い取った人も事情は分かっていて超迷惑な人を住み続けられるようにするためにあえて買ったのでは、とも疑えるところですが、他人の財産を勝手に競売するという劇薬のような手続でもあるので、かなり抑制的に運用されているということですね(なお、判決が出て競売申立がされた後に売るのは意味がない)。
 マンション管理規約は性善説的な決まりになっている所も多いのですが、今後、議論は深まっていくと思います。

負担付贈与の特別受益額算定について

東京高裁令和5年12月7日決定

【事案の概要】
 被相続人である父が、長男に対して収益不動産であるマンションを、当該マンションの建築費用として借り受けた債務の負担付き(免責的債務引受)で贈与したが、同贈与による特別受益の額をどのように算定すべきかが争点となった事案。
 申立人である二男は、「亡父の口座に入った賃料でローンの弁済がなされているし、当該口座の通帳は亡父の管理下にあり、実質的には父親が収益物件を管理し続け、ローン完済後に通帳を渡されているのであるから、長男が受けた贈与は、負担がついていない不動産というべきである。したがって、相続時評価額そのものが特別受益になる」と主張した。
 これに対して長男は、自分の名義で負債を抱えて、賃料収入を原資として最終的には財産価額を上回る弁済額となっている。特別受益にはあたらないなどと主張した。
 なお、当該収益不動産に関しては、争いのない事実として、①贈与時の評価額が4005万円、②贈与時残債務額2481万2000円、③相続時評価額3335万円である。

【原審の判断】
 長男が引き受けた贈与については、亡父が連帯保証していた。ローンの引き落とし口座は長男名義で、マンションの賃料が毎月約30万円振り込まれ、うち債務の弁済として毎月約12万円が支払われていた。
もっとも、前記長男名義口座は亡父が管理し、マンションの賃料の回収や管理、賃借人の募集、固定資産税の支払い等はすべて亡父が行っていた。
亡父は死亡する数年前に長男に通帳を引き渡したが、このとき、ローンは完済されていた。
亡父は二男・長女にもそれぞれ不動産を遺すと言っていたが、建築時期と税制の都合等から、生前に名義変更を行わなかった。
以上の事情からすると、亡父は子らにそれぞれ一棟ずつの収益不動産を遺そうとしたことが推認され、長男は実質的に負担することなく本件不動産をもらい受けているというべきであるから、相続時の評価額満額に当たる3335万円を特別受益として持ち戻すべきである。
【高裁判旨】
1 負担付き遺贈であること
 贈与が成立した以上、贈与後に生じた賃料は当然に受贈者である長男に帰属する。賃料収入を原資として負債の弁済が行われているが、これは長男の計算において行われたものである。
 通帳が引き渡された時期には完済されていたとしても、完済前に亡父が死亡していれば、当然、長男が債務を支払っていくことになるのであり、長男が経済的負担をしていないということはできない。
 亡父が賃料収受、債務の弁済、租税公課の支払をしているのも、長男の計算により行われているのであり、通帳を亡父が管理して各手続を行っていたとしても、本件贈与が負担付きではないと評価することはできない。

2 特別受益額の計算方法
 負担付き贈与がされた場合における贈与の価額とは、贈与の目的物の相続開始時の科学から当該負担の額を控除した価額である(改正前民法1038条)。
 贈与時の価額(4005万円)から引き受けた負担である残債務額(2481万2000円)を控除した額は1523万8000円である。控除後の額と、本件不動産全体の評価額との割合は38%であるから、これが相続財産における特別受益になる。そこで、相続時の本件不動産の価額3335万円の38%である、1267万3000円が、長男の特別受益である。

【解説】

 うーん法的には高裁判決のようになるよねとしか言いようがないが、実際の事情として、親父が入居者をいれ、口座の管理もして税金も払っていたのに、「名義移転しているからしゃあなし」と言われてしまうのはちょっとね、という気持ち。むしろ地裁判決の方が血が通っているというか、「実質的には親父の財産なのを、相続を見据えて形式的にラベルを張り替えただけやろ。兄弟にそれぞれ収益不動産を遺すつもりだったみたいだし」という実情を踏まえているような気がします。

小学校の校庭で児童に接触して転倒した老人の過失割合

【事案の概要】

 グラウンドゴルフ愛好会が小学校の校庭を借りて開催しているグラウンドゴルフに参加するために、小学校のグラウンドに立ち入った原告が、集団下校のためにグラウンドにいた児童らと衝突して転倒する事故が発生。
 グラウンドゴルフの開催時刻までまだ間があり、学校側からは「早めに来ないで」とたびたび愛好会メンバーに注意することがあったが、事実上、早めに来て待っていることは黙認状態ではあった。そうしたときに学校活動の邪魔にならないようグラウンドの端を歩いて集合することは愛好会の共通認識ではあったが、原告は、児童の列を気にせず、グラウンド中央付近を歩いていたところに、ふざけていて走り回っていた児童が衝突したという事故。
 原告は、転倒により大腿骨転子部を骨折し、約4か月入院、その後、1年間かけて通院治療をした(実治療日数6日)。
 原告は事故当時者である児童2名と学校を訴えた。請求金額725万8125円。

【判旨】
 児童らに不注意があったことは否めず、損害賠償義務がある。
 学校の注意義務違反はない。事実上、グラウンドゴルフ愛好会の会員らが児童らの邪魔になるようなことを黙認していたとも言えるが、成人である会員らにおいて児童らを回避すべき側面もあるし、その場で下校指導をしていた教員らが、児童の動きや原告の動きを把握していたわけではなく、本件事故を具体的に予見できたとも言えない。
 また、原告も、わざわざ危険に近づいたともいえ、6割を過失相殺すべきである。
 損害額は約220万円(医療費、慰謝料等)であるから、賠償すべきは88万円である。

【解説】
 本件については、控訴審において令和7年1月15日に控訴審判決が出され、過失相殺は9割であるべきで、児童らの支払いは22万円でよいと、原告(けがをした老人)に厳しい内容に見直されました。
 高裁判決では、「原告は許可された時間前に校内に入った上、グラウンドの端ではなく、あえて下校のために集合していた小学生の列を貫くように通過した」「ぶつかった児童側に過失はあるものの、会員の行動は児童を危険にさらし、学校運営を妨げるもの。通常の判断能力を有する成人であればおよそ考え難い」などと原告を強く非難する内容となっています。
 児童側もふざけて走り回って84歳の老人をぶっ倒しているので、賠償が一切不要ということにはならないのですが、退院後も、実際に通院したのは6回だけなのに、1年間にわたる通院を続けていたり、そうした入通院慰謝料とは別に「謝りに来ないから」と300万円を上乗せするとか、なかなか香ばしい主張を展開しているので、まあなんというか皆さんお疲れ様でした、という話。
 教訓にするとすれば、子どものしたことではあっても、大けがにつながることもあるし、老人を転ばすと治療が長引くので賠償額も増えるよ、というごく当たり前のことでしょうか。
 児童側の弁護士費用としては100万円程度はかかっている(725万請求されて22万まで減額ですから)のではないかと推察されます。また、このグラウンドゴルフ愛好会はきっと、この学校の校庭はもう使わせてもらえないでしょう。原告も、大腿骨転子部を骨折して大変な目に遭われたとは思いますが・・・。

口外禁止条項

 超高額示談して口外禁止条項も付けたのにばれてしまった事案が話題ですが、街弁の実務としては、口外禁止条項にあまり期待はしていません。というのも、(1)口外禁止条項違反を立証するのは困難であること、(2)契約違反による損害賠償額を予め定めて合意をとるのも難しいし、定めておかない場合、損害賠償額の立証も簡単ではないこと、といった事情があります。

 もっとも、一般的には、相手方がSNSに投稿するといった行為を牽制する効果はかなり大きいので、「おまじない程度ですよ。具体的に言うと、塀に鳥居のシールを貼るくらいの効果」と伝えた上でつけますね。

 多いのは男女のトラブルと、労使関係の問題(残業代などで成功体験を他の従業員に共有されたくないとか)でしょうか。

 有名人の事件でレピュテーションリスクへの配慮が大きい場合はまた異なる考え方があるでしょうね。

 

嫡出推定を受けた子について,DNA鑑定で生物学上の父子関係がないと判明した場合の親子関係不存在の訴えについて

最高裁平成26年7月17日判決(第一小法廷)

【事案の概要】

 Y(父親)はX(子)の母Aと平成11年頃婚姻した。AはB(浮気相手)と平成20年頃から交際するようになったが,Yとの同居を継続していた。平成21年にAはXを出産した。YはAから,出産したXは別の男性との子であると知らされたが,XをYA間の子とする出生届を提出し,監護養育した。

 その後YとAとは,平成22年にXの親権者をAとして協議離婚し,XはAとBと生活している。

 Aは平成23年,Xの法定代理人として親子関係不存在の訴えを提起した。なお,X側で行ったDNA鑑定に寄れば,BがXの生物学上の父親である確率は99.999998%であるとされていた。

 旭川家裁,札幌高裁はいずれも,科学的証拠により客観的かつ明白に証明されていること,子の母と夫が既に離婚して別居し,子が母親に養育されていることから,嫡出の推定が排除されると解するのが相当であるとして,親子関係不存在確認の訴えの適法性を肯定し子の請求を認容すべきものとした。

 

【判旨】

 原判決破棄,訴え却下。

 嫡出の推定を受ける子につきその嫡出であることを否認するためには,夫からの嫡出否認の訴えによるべきものとし,かつ,同訴えにつき1年の出訴期間を定めたことは,身分関係の法的安定を保持する上から合理性を有するものということができる。

 夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから,上記の事情が存在するからといって,同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず,親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。

 

【解説】

 結婚している女性が産んだ子は,とりあえず夫の子と推定されます。これを嫡出推定といいます。これを争うのは,基本的には夫から「俺の子じゃない!」という訴えを起こす他ありません。これを嫡出否認の訴えといいます。しかし,この訴えを起こせるのは1年以内と定められています。後からわかっても今まで育てた子を俺の子じゃないと拒否するのは可哀想でしょう,という趣旨です。

 もっとも,結婚中に生まれても,夫が刑務所に入っているとか,明らかに夫の子ではない事情がある場合は,「推定が及ばない子」ということになり,後からでも親子関係不存在の確認を求めることができます。これは,夫以外にも,子や妻や利害関係人が提起することが可能です。

 さて現代では,DNA鑑定が身近になったことにより,結婚中に生まれた子が,別の男性と父子であることが科学的に判定できるようになりました。

 そうすると,夫の子ではないことが,科学的に明らかなのですから,刑務所に入っている間に生まれた子と同様に,「推定の及ばない子」であり,子から父子関係について争えるのではないかと考えられますね。事実,近年,DNA鑑定書類をつけて,生まれてから数年後,場合によっては10数年後に親子関係を争うケースが増えました。

 市民感覚としては,DNAが違うんだからそれでいいじゃん,と思うのですが,今回の判例は,DNAが違っても,法的な父子関係が後から覆されるのは法の趣旨に反する,という観点から,そうした争い方は不適法であると結論づけました。

 これは,法律解釈という側面からすればいたしかたないと思います。補足意見でも,解釈論を越えており,立法政策の問題であると指摘されています。つまり,時代に合わせて法律を改正してくれよ,ということです。

 浮気相手との子が夫の子として戸籍に乗るのが嫌で,届出をしないというケースもありますし,代理母が産んだ子や第三者からの精子提供を受けて産んだ子はどうするのか,現代の親子関係と法のすりあわせは,課題が山積みです。

 ちなみに,私もDNA鑑定で実の子ではないとはっきりしたので親子関係を否定したい,という父親から依頼を受け,訴えを提起したことがあり,自分の事件の判決期日直前にこの最高裁判決が言い渡されたというニュースを聞いて青くなったという経験があります。私のケースは,相手方も別にいいよ,という感じだったので希望通りの結論になりました。いろいろ裁判例なども調べましたし,極めつけがこの最高裁判決ですので,思い入れがありますね。