弁護士とんぐうの弁論準備

裁判例のメモとか。

差押債権の特定

【最高裁平成24年7月24日判決】

 平成24年度重要判例解説掲載

 

【事案の概要】

 差し押さえるべき債権の範囲として、普通預金債権のうち差押命令送達時に存在する預金と同日を含む1年が経過するまでに受け入れた金員によって構成される部分、とする差し押さえは許されるか。

 

【決定要旨】

 第三債務者である銀行は、出入金のたびに差し押さえ債権の額と預金残高の額とを比較する必要があるが、そのようなシステムは構築されておらず、実現することは期待できないのであるから、将来預金に関する部分については、第三債務者において、速やかにかつ確実に差し押さえられた債権を識別することができるものと言うことはできない。

 

【解説】

 要するに、「差し押さえの日から今後一年間その口座に入ってくるお金は、差し押さえた金額に達するまでは全部差し押さえ対象ね☆」という内容で差し押さえをしようとしたが、「それだと銀行がその口座をずっと見張っていちいち差し押さえの残高とかチェックしないといけなくて大変だからだめダヨ」とされてしまったもの。

 まあそうでしょうな。

 多くの人がご存じないのだが、判決を取っても「相手がどの銀行の何支店に口座を持っているか」を知らないと回収ができないのである。○○銀行にある全ての支店の口座を端から順番に充当していってください、ではだめなのである(最高裁平成23年9月20日決定)。

 そんなわけでいろんな弁護士がいろんなヒネリを加えた差し押さえ申立を試みているのであるが、なかなかうまくいかない。

 本事案のような特定は確かに、銀行に無理を強いるように思うが、○○銀行の全ての支店の預金口座を見て端から順々に、なら十分可能だと思うんですがねえ。

 

 

ケンコーコム判決

【最高裁平成25年1月11日判決】

 判例タイムズ1386号掲載

 

【事案の概要】

 厚労省は、薬事法を改正する法案を作成し、平成18年3月に内閣から国会に提出された。同法案の作成にあたっては、検討部会において、対面販売を原則とすることなどを基本方針とすることが議論された。

 審議の上、同法案は可決成立し、その後厚労省は平成20年11月、郵便等販売については一定の医薬品に限り行うことができ、それ以外の医薬品は店舗において専門家との対面により行わなければならない旨の施行規則を定めた。

 そこで、それまでインターネットを通じた医薬品の郵便等販売を行っていた事業者であるXが、同規則を無効として訴えた事案である。

 1審では国が、2審では原告が勝訴していた。

 

【判決の要旨】

 上告棄却。

 旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約でするものであることが明らかである。新施行規則が新薬事法の趣旨に適合し(行手38条1項)、その委任の範囲を逸脱したものではないと言うためには、立法過程における議論をも斟酌した上で、新薬事法中の諸規定を見て、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読みとれる事を要するものというべきである。

 しかるところ新薬事法36条の5,6は、分離上は郵便等販売の規制並びにテンポにおける販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務づけていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、販売等の方法の制限について定める新薬事法37条1項も、郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない。

 検討部会や国会審議等で、郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたということだが、にもかかわらず、郵便等販売に対する新薬事法の立場は不分明であり、国会が第一・二類医薬品にかかる郵便等販売を禁止すべきと考えていたとは考えにくい。

 そうすると、新薬事法の授権の趣旨が、第一・二類医薬品にかかる郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものであったと解するのは困難である。

 したがって、新施行規則の当該部分は、一律禁止という限りで新薬事法の趣旨に適合せず、委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。

 

【検討】

 立法過程では対面販売優遇で行くつもりだったのに、完成した新法の条文が、裁判所から見るとネット販売を規制するようには見えないものだった、という喜劇。これが厚労省の手落ちだったのか、あえてフラットな条文にしておいて規則でどがちゃがやろうとしていたのかは不知。

 立法過程の議論は宝の山だし、解釈指針として説得力もあるけど、やはり条文からどう読み取れるか、が重要ということですね。

 ところで、このエントリのためにケンコーコムをのぞいてみたのですが、頑張って説明してますねえ。薬剤師にメールやTV電話で相談もできるし、自己申告でスクリーニングもしている。ただ、あまり熱心に読まない消費者について問題が発生したらどうなるんでしょうね(多分そうなるでしょう。)。楽な方法を選んだ消費者の責任でしょうか、説明を尽くさなかったネット事業者の責任でしょうか。一般論としては、対面販売より大量・低コストな取引が可能になっている事業者が危険を負担すべき、となると思うのですがさて。

債務名義があっても仮差押できるとした事例

【東京高裁平成24年11月29日決定】

 判例タイムズ1386号掲載

 

【事案の概要】

 XはAの破産管財人であるが、AはYに対し金銭債権を有しており、これについて執行認諾文言付き公正証書を作成していた。そこでXがYに対し、債権執行を行うべく、Yの財産保全のため仮執行の申立てをしたところ、権利保護の必要性無しとして却下されたので、Xが抗告した事案。

 

【決定の要旨】

 原決定取消。

 仮差押命令は、民事訴訟の本案の権利の実現が不能あるいは困難となることを防止するために、債務者の責任財産を保全することを目的とする民事保全処分である。債務名義を有している場合は、原則として民事保全制度を利用する必要性は認められない。

 しかしながら、債務名義を有している場合であっても、すみやかに執行を行うことができないような特別な事情があり、債務者が強制執行が行われるまでの間に財産を隠匿又は処分するなどして強制執行が不能又は困難となるおそれがあるときには、権利保護の必要性を認め、仮差押を許すのが相当である。

 これを本件についてみてみると、Xは破産管財人であって、公正証書により債権執行を行うには、承継執行文を得てこれを公証役場から送達し、その送達証明書を添付して債権執行の申立てを行わなければならない。そうすると、相手方にXが強制執行を準備していることを予想させ、本件仮差押債権の弁済期がせまっていることからすれば、弁済を受けるまで送達を受領しないおそれもありえるから、上記特別な事情がある場合にあたると認める。

 

【検討】

 債務名義がある場合は、強制執行できるから、本来的には仮執行する必要がないところ、場合によっては、強制執行まで時間がかかったりその間に財産隠しをされたりするような可能性がある場合には、権利保護の必要性があるから、仮執行してもいい、ということ。ですよねー。

 まともにやってると回収できなくなる、という事情をしっかり疎明できるかがポイントでしょう。

 ちなみに、執行すればいいでしょ、ということで、保全の必要性無しと判断された場合もあるようです(判決文未確認。東京高裁平成20年4月25日決定・判例タイムズ1301号)。

 保全の必要性の有無なのか権利保護の必要性の有無なのかは見解が分かれている様子。そこんところは学者先生にお任せします。正直どっちでもいいと思うんだが。

 

連帯保証契約が銀行担当者の虚偽を含む説明によりなされたものであり無効とされた事案

【東京高裁平成24年5月24日】

 判例タイムズ1385号掲載

 

【事案の概要】

 Aは、B銀行から4.5億円の借り入れをして、商業ビルを購入した。このとき、Aの兄である控訴人は、Aの借入金のうち2.5億円について連帯保証した。

 この連帯保証契約の際、B銀行の担当者は、「お兄さんには一切迷惑がかからない。」などと説明していた。

 B銀行は経営破綻したため債権回収機構が債権の譲渡を受けていたが、その後Aが支払を怠るに至ったため、控訴人に対し残債務1.5億円の支払を求めたところ、控訴人が話が違う、と支払を拒んだ事案。

 なお1審では、契約当時は十分な担保余力があり、B銀行担当者の詐欺や錯誤ではないと判断し、保証債務を支払うべきとの判決だった。

 

【判決の要旨】

 原判決取消、請求棄却。

 控訴人は突如、弟と銀行担当者の訪問を受け、その場で2.5億円の保証人になって欲しいと言われて、その席において連帯保証契約の締結を承諾している。控訴人は給与所得者であり、2.5億円の支払いをする見込みなどなかったのであるから、兄弟関係があるとしても、そのような巨額の保証契約に直ちに署名押印すると言うことは通常であれば考えにくい。つまり、控訴人が即日これに応じたのは、銀行担当者が「10億の物件が4.5億で買える」「(控訴人が保証する)2.5億も、物件がちゃんとのこる」「お兄さんには一切迷惑がかからない」などと発言したことにより、仮に弟Aの支払が滞ったとしても、貸付額に十分な担保余力があり、B銀行が自分の責任を追及するような事態には至らないと考えたことによると見るのが自然である。

 なおB銀行は、融資にあたって、査定によれば7500万円のリスクがあると判断していた。したがって、B銀行の把握していた本件ビルの査定額は約3.75億円であった。また、収益性を含めた査定額では5億円程度と見込んでいたものの、仮にこれが適正な査定だとしても、担保権の実行の場面での担保価値とは異なるのである。

 したがって、B銀行担当者の発言はいずれも事実ではなく、また、控訴人に対し、B銀行の査定基準によれば担保が不足している(保証債務の履行をせまられる可能性がある)という事実も告げられなかった。

 確かにB銀行は、控訴人の資産状況等の資料を提出させておらず、B銀行としても物件から回収できると考えていたとの主張も一理ないではない。しかし、そもそも、確実に物件ないし物件の収益から貸付金が返済されるのであれば、連帯保証人を求める必要もないのであり、B銀行担当者が虚偽を述べていたわけではないとの弁解は採用できない。

 そうすると、控訴人は担当者の発言から事実を誤信し、誤信した事実を動機として、本件連帯保証契約を締結したのである。そして当事者間で動機の表示があったことはあきらかである。したがって、本件契約は錯誤無効というべきである。

 なお、債権回収機構はAから債権譲渡について異議をとどめない承諾を受け、また控訴人も、Aの承諾内容を承認し引き続き保証するとの書面に署名押印している。しかしこれは、主債務の債権譲渡を了知したこと及び控訴人が連帯保証人であることを確認したものにすぎず、保証債務の債権譲渡について異議をとどめない承諾をしたとみることはできない。仮にそれにあたるとしても、控訴人は当時無効事由を知らず主張し得なかったのであるからやむをえない。

 

【検討】

 銀行内部では担保割れの可能性を示す調査結果があるのに、保証人に対しては問題ないと説明し、保証を取り付けた事案。こう書くとそらアカンやろ、となるが、(1)保証契約書に署名、(2)銀行員が面談して説明、(3)契約時の担保余力自体はそれなりにあったとも考えられる、(4)債権譲渡の際も確認している、などの事情もあり、正直、苦しい戦いになるなと感じる。実際、一審では負けてるし。

 とはいえこれは勝たなければいけない事件、というやつであろう。本件の証拠収集の段取り・苦労についても代理人にお聞きしてみたいものである。

公務員による政治的文書配布が有罪と認められなかった事例

【最高裁平成24年12月7日】

 判例タイムズ1385号掲載

 

【事案の概要】

 厚生労働省職員である被告人が、衆議院選挙に際し、支持政党のため、同党の機関紙や政治的目的を有する文書を、数十箇所の郵便ポスト等に配布したことから、国家公務員法違反で起訴されたという事件。

 なおこの被告人は、当時、社会保険事務所で相談業務などを担当しており、人事権や裁量権はまったく持っていなかった。また、配布は休日に行われた。

 1審では有罪と認め、被告人を罰金刑に処したが、2審では無罪とした。そこで検察官が上告した事案である。

 

【判決の要旨】

 上告棄却。

 処罰対象となる「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、現実的に起こりうるものとして実質的に認められるものを指す。

 本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識しうる態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとは言えない。

 

【検討】

 まじめに法律を勉強したことがある人なら、「お、猿払事件判例変更か」と色めき立ちそうな事件だが、単に政治活動と言うほどのことはやってないよ、という判断になったもの。

 なお猿払事件は、管理職ではない郵便局員が、支持政党の公認候補者のポスターを公認掲示場に貼り、あるいはポスターの掲示を依頼して配布したという事件で、有罪。公務員の政治的中立性を損なうような政治活動を規制する刑罰規定は合憲であるとの判例なのだが、仕事が終わった後に候補者のポスター配るくらいええやんけ、と思ったものである。

 もっとも猿払事件の被告人は、公務員が組織していた労働組合の政治的活動として行ったという点で、いわばガチであり、やはり国民からすれば規制やむなしとの声も大きいのかもしれない。

 本件判例は、猿払事件の射程を明らかにしつつ、公務員の政治的中立を規制するのは合理的であり、制限は必要かつ合理的な範囲にとどまると繰り返しており、これまでの最高裁判例を変更するものではないと明確に述べている。

 もっとも、これくらいの条件であれば、公務員が赤旗(あっ)配っても無罪になる、というのがはっきりしたのは非常に大きい意義を有する判決である。

子の引渡につき必要性を厳格に解した事例

【東京高裁平成24年10月18日】

 判例タイムズ1383号掲載

 

【事案の概要】

 当事者らは、平成19年ころから婚姻し、翌年長男をもうけ、マイホームも築いた夫婦であったが、妻が署名押印した離婚届を置いて、長男を連れて実家に戻った。

 2か月後、夫が自宅に連れ帰った。その晩、夫から妻に電話をかけ、「パパがいい、帰りたくないと言っている。」などと連絡し、妻も「それなら泊まってきてもいいよ。」と応じた。

 翌日、妻やその親らが夫に早く子を連れてくるよう求め、夫が子を連れてきたものの、子は実家の玄関口で「パパがいい。」といって泣くので、妻もしかたないと考え、親も「一日二日めんどうを見てくれ。」と言った。さらに翌日、妻は、事前の連絡なく夫の自宅を訪問したが連れ帰るには至らなかった。この際、子も「ママ」と呼んでついて行こうとは全くしなかった。

 妻は2週間後、審判を申立てるとともに、審判前の保全処分として子の引渡を求めたところ、原審がこれを認めたため、同執行に対し夫が抗告した事件である。

 

【決定の要旨】

 原審判取消。

 審判前の保全処分として未成年者の引渡を命じる場合には、監護者が未成年者を看護するに至った原因が強制的な奪取又はそれに準じたものであるかどうか、虐待の防止、生育環境の急激な悪化の回避、その他の未成年者の福祉のために未成年者の引渡を命じることが必要であるかどうか、及び本案の審判の確定を待つことによって未成年者の福祉に反する事態を招くおそれがあると言えるかどうかについて審理し、引渡の強制執行がされてもやむを得ないと考えられるような必要性があることを要する。

 

【検討】

 『審判前の保全処分で夫から妻へ→抗告審において不当として取消し、妻から夫へ→監護者を妻と定め、監護者に引き渡すよう命じる本案確定し、夫から妻へ→本案後離婚訴訟が提起され、夫を監護者と定める判決が確定し、妻から夫へ』と理論上は何度も子供の身柄がキャッチボールのように行ったり来たりします。裁判所はそうならないような解決を図ります。

 少なくとも、保全処分、つまり仮にめんどうを見る親を決める、という場合には、よほど相手方が悪質でなければ認められません。法的には、子の引渡の必要性につき、家事審判法15条の3第7項準用民事保全法23条2項に則って厳格に絞り込んだというものです。

 今回の事案で、妻が最初に子を渡さないよう細心の注意を払っていれば逆に夫側から引渡を仮処分として求めるのは困難だったのではないでしょうか(もちろん妻が虐待をしているとかの事情があれば別です。)。

 

児童ポルノ画像へのリンクURL掲示行為が公然陳列にあたるとの判断が維持された事例

【最高裁平成24年7月9日】

 判例タイムス1383号掲載

 

【事案の概要】

 被告人は、自身が運営していたウェブサイトに、第三者が設置したハードディスクに記憶された(他のインターネット上の掲示板に貼り付けられていた)児童ポルノ画像へのURLを貼り付けた。貼り付けたURLは一部があえてカタカナにされていた。

 このことが、児童ポルノの公然陳列にあたるとして、公訴提起されたところ、一審、二審とも有罪とされたので、被告人が上告した事件。

 被告人は、URLを掲載することは陳列にはあたらないなどと争った。

 

【判決の要旨】

 上告棄却。

 上告趣意は適法な上告理由にはあたらない。

 

【反対意見】

 わいせつ物陳列罪(刑法175条)の「公然と陳列した」とは、わいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないとするのが最高裁判例である(最高裁平成13年7月16日)。このことは児童ポルノ法の「公然と陳列した」にも該当する。

 しかし公然と陳列したとされるためには、既に第三者によって公然陳列されている児童ポルノの所在場所の情報を単に情報として示すだけでは不十分であり、当該児童ポルノ自体を不特定又は多数の者が認識できるようにする行為が必要である。

 本件被告人には公然陳列罪は成立せず、幇助罪が成立する可能性があることから、原審を破棄して差し戻すのが適当である。

 

【検討】

 リンクにせず単にURLをはっつけても、そういうご趣味の人がたくさんいるところでやれば、画像を貼るのと同じということのようです。

 URLを貼るのは児童ポルノの所在情報を示しているだけですが、極めて容易にアクセスできる手段を与えますので、それ自体陳列というのもありえる考え方ではあると思います。

 私は当初、雑居ビルの一室で児童ポルノを陳列してますよ、とポスターで場所を教えてるのと同じなんだから、陳列の幇助にすぎないと考えましたが、URLの特性上、「この覗き穴から見えますよ」と覗き穴を設置しているのと同様に考えるべきかなと思いました。

 とはいえ控訴審では、「閲覧者に対して児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものかどうかという点も、児童ポルノの「公然陳列」に該当するか否かの判断につき重要な要素である」などとされており、そんなん条文のどこに書いてんねん、という気がしますのでやや納得しかねます。ことほどさように、裁判所は検察官に対し物わかりが良く、いろいろ理屈をつけて有罪にしたがる癖があります。

 控訴審もやはり単に英数文字の羅列を記載しているのを陳列と直ちに言うのはためらわれたのでしょう。周辺状況から誘引性が高ければ、閲覧者からすればリンクされているのと変わりがない、という理屈のようです。

 なお、日本の裁判は三審制です、と義務教育で習いますが、実のところ最高裁で判断してもらうにはせま~い関門をくぐらなければならないのです。刑事裁判で上告するには、(1)控訴審判決が憲法違反、(2)控訴審判決が判例違反、(3)判例がない重要な法令解釈に関する問題を含んでいる、のどれかにあてはまらなければなりません。

 この被告人も、一所懸命憲法違反を訴えたのですが(まあ書いたのは弁護人ですが)、単なる法令違反や事実誤認等を言っているに過ぎない、としてさくっと棄却されてしまいました。

 いや、控訴審判決に法令違反や事実誤認があったらあかんやろう、と思うのですが、最高裁は動いてくれないということになっています。まあ実際にはイロイロあるんですけど。

 ちなみに裁判官2人は棄却すべきではない、として反対意見を書いています。最高裁小法廷は裁判官5人構成ですから、実はこの判決は3:2の僅差だったんですね。